第6章 ホワイトガーデン
「借金は自分で豪遊した結果なんだからスイレンが謝ることじゃないよ」
にきっぱり言われ、シャチは「そのとおりです」とぐうの音も出ない。
「すいません……」
ベポも打たれ弱く落ち込んだ。スイレンは落ち込むベポにそーっと手を伸ばし、「そういえば、キャプテンたちどうしたんだろうね?」と彼が顔を上げたことで慌てて引っ込めた。
「撫でててもベポは怒らないよ?」
ひそひそとはスイレンにささやきかけたが、「べ、別にもこもこが気になったわけじゃない」と意地っ張りな人形に否定されてしまった。
「いつもはふかふかなんだけど、この島暑いから、今のベポはしっとりしてるの。あんまりおすすめできないんだ」
「あの……、聞いてる?」
船長の心配はもちろんしているが、初めてもこもこ好き仲間ができそうな気配に、はスイレンの勧誘に完全に夢中になっていた。
「寒い時のベポは本当にふかふかもこもこなんだよ。お日さまの匂いがしてすっごく気持ちいいの」
「……べ、別にうらやましくなんかない」
「あとね、今お腹もたぷたぷなの。キャプテンは痩せろって怒るんだけど、柔らかくて気持ちいいんだよ」
はスイレンの手をとって、ベポのお腹を触らせた。
「あのー、、俺のお腹のことより、キャプテン……」
「すごく撫で心地がいい。これは衝撃」
「でしょ!」
女子二人は聞いてなかった。
ベポのお腹を存分に撫で回し、スイレンは「あなたたちにお願いがある」と言い出した。
「ベポはあげられないよ?」
申し訳なさそうには断った。
「そうじゃなく――いやもちろん、もらいたくないわけではないけれど。ふかふかの毛皮を抱いて毎晩寝れたらどんなに気持ちがいいか……でもお願いはそうではなくて――彼を、この島から連れ出してほしい」
「U-2のこと?」
スイレンは頷いた。
「私は都市と人々を守るために作られた人形。壊れるまで使命を放棄するわけにはいかない。でもあの子は違う。珀鉛の脅威のないほかの島でなら、地上で暮らすことだってできる。地下でこれから先の人生をたった一人で生きていくなんて……寂しすぎる」