第6章 ホワイトガーデン
「仲間を見つけたら、また戻ってきて。きっとだよ……」
別れを惜しんで、U-2はワイヤー製の小さな虫かごをに手渡した。
中に入っているのは白い羽毛の翅が生えた、蝶のような虫たちだった。暗闇でほんのりと光り、ランプのようになっている。
「シルクワームの成虫だよ。ヒカリゴケに集まる習性があるから、飛ぶ方向に進めばまたここに戻ってこれる。地上との出入り口はいくつかあるけど、どれも地下カトパタークにたどり着くまでは100近くに分岐してる。迷ったら生きては出られないから気をつけて」
「地上までは私が送る」
スイレンの申し出をありがたく受けて、たちはU-2に別れを告げた。
◇◆◇
暗い洞窟を歩きながら、はスイレンに話しかけた。
「またぶつからないように手をつなごう」
「ありがとう……」
今度は明かりがあるとはいえ、センサーであるスイレンの片目は壊れたままだ。彼女がぶつからないよう手を握って、はにっこり笑った。
「それにしても、大都市カトパタークはすごかったんだね。人間と変わらない人形が作れるなんて」
「もともと私達は、都市の防衛と、丹砂の採掘のために作られた。必要な機能だけで、ほとんど喋る機能も持たなかったんだ。根気強く言葉や心を教えてくれたのは、地下に逃れた住民たち。もし私を人間のようと思ってくれるなら、それは彼らが500年かけて私達を人間にしてくれたということ」
語るスイレンの口調はどこか嬉しそうで、誇らしげだった。
「丹砂っていうのが黄金を作れるお宝のことなんだろう? それってまだこの島に眠ってるのか?」
借金で首の回らないシャチが、儲け話に食いつくタイミングを逃さず尋ねた。
「残念ながら、500年でほとんど取り尽くしてしまった。珀鉛病に効く唯一の薬でもあったために、みんな必死で掘り尽くしたんだ。見つけるのはとても困難。それに黄金が目当てなら、丹砂から精製するのは割に合わない。砂金を探したほうが楽」
借金完済を夢見ていたシャチとベポは、スイレンの言葉にがっくりとうなだれた。そのあまりの落ち込みようにスイレンはたじろぐ。
「がっかりさせてしまって、すまない」