第6章 ホワイトガーデン
「でも……せめて無事を伝えなきゃ。そうだ、電伝虫はある?」
「あるよ。といっても、ほとんど使うことはないんだけど。精密部品の組み立ての練習にうってつけなんだ」
U-2は妙に立派な受話器のついた電伝虫を持ってきてくれた。
に急かされ、シャチがハートの海賊団の電伝虫・デンデン(命名)にかける。だが呼び出し音がなるばかりで、誰も出なかった。
「おかしい。キャプテンとペンギンとゴンザがいるはずなんだろ?」
青い顔では頷いた。
「まさかブラッドリーに――」
U-2の言葉に反射的に駆け出そうとしたを、シャチがすんでのところで捕まえる。
「! 本当にそうならこういう時こそ冷静にならなきゃダメだ」
「だってキャプテン具合悪いのに……っ。どうしよう、私がすぐ戻らなかったせいだ」
「のせいじゃない。宝に目がくらんで引き止めたのは俺達なんだから」
「戻るなら俺たちも一緒に行くよ。だから一人で行動しないで」
たぷたぷのベポのお腹に抱きしめられ、は窒息しないように気をつけながらハートの海賊団のシロクマに抱きついた。
「本当に戻るの? 珀鉛病の発症には猶予があるとはいえ、噴火の規模によっては人間が抗う方法はない。逃げる間もなくあっという間に死んじゃうんだよ」
U-2はなんとか引き留めようとしたが、の決意は揺るがなかった。
「自分だけ安全な場所にいるなんてできない。死ぬならなおさら、船とみんなのところに帰りたい……キャプテンのところに」
「俺も」
ぎゅっとを抱きしめて、ベポは笑う。怖がりでよく泣くシロクマのくせに、今日のベポには怯えた様子はなかった。
震えを必死に抑え込んで「俺もだ」と続いたのはシャチだった。ガチガチと歯が鳴っているにも関わらず、無理してなんとかぎこちない笑みを浮かべてみせる。
「マリオンは残ってもいいよ」
「いいや、俺も行くよ」
真っ青な思いつめた顔で、彼は思いの外きっぱりと言った。逃げるだけでは何一つ解決なんてしないことを、マリオンは本当はよく理解しているのだろう。そして同時に、彼は逃げることに疲れ切ってもいる様子だった。