第6章 ホワイトガーデン
「確かにあいつは、どこかの国を乗っ取ると言っていた……そのためにより戦闘力の高い――使える人形を作れる人形師が欲しいと。だからあいつは僕らをさらいに来たんだ」
自分の国に降り掛かった悲劇がまさかこんなところにまで影響していたのかと、マリオンは拳を握る。震える彼を気遣うようにはそっとマリオンの腕に触れた。
「それで……みんなさらわれてしまったの?」
「……いいや。みんな協力を拒んだんだ。僕らには大都市カトパタークと、その遺産である自動人形を守っていく義務がある。だから抵抗して……みんな殺された。何人かは無理やりさらわれて船に乗せられたけど……地上に出れば珀鉛病が発症する。きっと長くはもたない。たまたま僕だけ、洞窟の奥に逃げ込んで助かったんだ」
あまりの話にたちは息を呑んだ。
己の無力さを悔いるように、スイレンが拳を握った。
「私は戦闘用の自動人形なのに……誰も守れなかった。ブラッドリーは諦めていない。一番腕のいい人形師であるU-2と、この島の宝である丹砂を狙っている。大量の殺戮人形を放って、大都市カトパタークの遺跡を破壊し、私達をおびきだそうとしているんだ」
「それがあの……丸鋸を振り回していたブリキ兵か」
ようやく合点がいって、シャチは考え込んだ。思っていたよりこの島の状況は悪い。
「ブラッドリーの人形はあれだけじゃない。小さなものなら100体近くいる。戦ったけど、私以外の人形もみんな破壊されてしまった……」
なぜU-2がこの島を「滅びゆく島」と言ったのか、痛いほどに理解できる話だった。U-2もスイレンもそれを受け入れ、互いに手を握り合ってもう覚悟を決めてしまっている。
部外者がかけられる言葉なんて何もなかった。
「……キャプテン、大丈夫かな」
心配が急にふくらんで、はそわそわと落ち着かなく体を動かした。
「ベポたちを連れてすぐ戻るって言ったのに、こんなに遅くなっちゃった。きっと心配してる……」
「一度戻る?」
ベポの提案に、は頷いた。それをスイレンが押し止める。
「噴火の兆候はまだ続いている。いま外に出るのは危険」