第6章 ホワイトガーデン
ぽつりぽつりと、U-2は話し始める。
「始めは……みんな彼を歓迎したんだ。この島のログがたまる時間は短い。大抵の航海者は地下都市に気づかず、次の島に行ってしまう。客が来るなんて何十年ぶりで――外の話に飢えてた僕らは彼を歓迎した」
それが間違いだったとばかりに、U-2は握り合わせた両手にぐっと力をこめた。そんなU-2を気遣うようにスイレンは彼の肩に触れ、「やつの目的は誘拐だった」と苦しみのにじむ口調で言った。
「誘拐たって――」
シャチは貧しい暮らしぶりのうかがえる洞窟住居を見回した。逆さに振ったところでここの住人が身代金を払えるとは思えない。というか、一体彼らは地下で何を食べて生活しているのだろうか。
同じことを考えたのか、ぐぅとベポの腹が鳴った。
「ああ、お腹空いた? もう夕食の時間だもんね」
怒るでもなくU-2は食事の支度をする。地下カトパタークは小部屋のような洞窟が連結する作りになっている。
隣のキッチンで、U-2はごちそうを作り始めた。
「どうぞ。たくさん食べて」
出てきたのはイモ虫の唐揚げだった。ひぃぃと思いながら、シャチたちは動揺を出さないようにするのが精一杯だった。
「いただきます」
スイレンが小皿に取り分けてくれたので、は礼儀正しく手を合わせた。せっかく振る舞ってくれているのに「それ虫だぞ!」とも言えず、あわあわとシャチたちはを見守る。
「ん、プリプリしてておいしい。エビ?」
「シルクナゲットっていう、カイコの幼虫。地下で育てられる食べ物は多くないんだ。地上の植物や動物はみんな毒の灰に汚染されてしまうし。乾燥させて粉にしたのを焼いたパンもあるよ。いっぱい食べて」
虫と知ってが吐き出すんじゃないかとシャチは思ったが、「そうなんだー」と彼女は普通に会話して、虫のパンにも手を伸ばした。ガラガラとシャチの中でのイメージが崩れていく。
ここに船長がいたら「お前を甘く見すぎだ」と呆れて言っただろう。