第6章 ホワイトガーデン
「灰に触れた人間はみんな、白い痣が全身に広がって死ぬことになった。その子供も同じだよ。直接灰に触れなくても、親の体が汚染されてしまうとそれを受け継いで寿命が短くなってしまう。だから大都市カトパタークの子孫は毒の灰が積もる地上には戻れず、地下で生活するようになったんだ。それがこの地下カトパタークだ」
感嘆の吐息を吐いて、ベポたちは地下都市を見回した。
U-2の説明に疑問を覚えて、は尋ねた。
「じゃあ、U-2はずっと地下で暮らしてるの? 地上には一回も出たことがないの?」
「……子供の頃に、一度だけ。どうしても外を見てみたくて、言いつけを破って地上に行ったんだ。出た瞬間、全身に白い痣が出て死ぬところだった。スイレンが見つけて連れ帰ってくれたおかげで、なんとか一命はとりとめたけど。地上の用事は、スイレンたち自動人形がこなしてくれる。大都市カトパタークの遺産だよ。500年前の地上の都では、自動人形たちが重要な労働力になっていたんだ。今はもう、その製法は失われてしまった。人形師と言っても僕にできるのは簡単な修繕だけ」
スイレンの顔の損傷具合を確かめて、U-2は「これも僕には直せない」とひどく悔しそうに唇を噛んだ。
「ほかに直せそうな人はいないの?」
U-2はまだ若い。技術が拙くても仕方ないと思えた。彼の師匠のような熟練の職人はいないのかと、は首を傾げる。
地下カトパタークには、ほかに人の気配は皆無だった。みんな殺されてしまった、と告げたスイレンの声が蘇る。
うつむき、暗い表情でU-2は首を振った。
「もう誰もいない……人間も、人形も、僕らが最後だ」
「どうして?」
何か力になれないかとは事情を聞き出そうとしたが、U-2はそれ以上話すことができなかった。
代わりにスイレンが、地下カトパタークの歴史を語り始める。
「地上を埋め尽くす毒の灰と、地下から出られない厳しい生活で……地下カトパタークの住人は数家族にまで減っていた。人形も同じ。かつて大都市カトパタークで何万体と作られた自動人形も、十数体にまで減ってしまっていた。――そこに数ヶ月前、ある海賊が来た」
「海賊――?」
同業者がこの話にどう関わってくるのかと、シャチたちは顔を見合わせた。