第6章 ホワイトガーデン
U-2はたちを招き、お茶を出してくれた。カトパタークという名の地下都市では、地面に座っての生活様式が普通なようだ。
色鮮やかな糸で織られた敷布が引かれ、また洞窟内という暗い環境を少しでも明るくするためか、壁にも所狭しとタペストリーが飾られている。
「苔茶だよ。あまりおいしくはないけど、薬効がある。地上を歩き回ったならよく飲んだほうがいい。これは灰の毒に効くから」
「本当に? 痣も治る?」
ならキャプテンにも持っていこうと考えたを、U-2は慌てて押し留めた。
「灰の毒に効くとは言っても、あくまで初期症状だよ。ノドの粘膜に作用して、吸収を妨害するんだ。発症してしまった人には効かない」
お茶の入った湯呑を握って、はしょんぼりと肩を落とした。
「本当にそんなに重篤な症状が出てるのか? この島には初めて来たんだろう?」
「他の場所で……病気になったの。治ったけど耐性は弱いままで、すごく苦しんでた。楽にしてあげる方法はない?」
「丹砂があれば……でもごめんよ。手元にはもうないんだ」
「タンサって言うのは?」
尋ねたシャチに、U-2は壁に掛けられたタペストリーを示した。そこには役場の遺跡に描かれていた壁画と同じ絵柄が織り込まれていた。
「神山プロメテウスの霊薬だよ。飲めばどんな毒も無効にし、不老不死と黄金をほしいままにできるという伝説の秘薬だ。地上の遺跡を見たかい? あれが大都市カトパターク。500年前まで、グランドラインでも有数の文明を誇った伝説の都だ。その発展は丹砂のおかげだったと言われている」
「地上の都市は火山の噴火で?」
苦いお茶に渋い顔をしながら、マリオンが尋ねた。
「ああ、火砕流に飲み込まれて一日ともたずに滅んだんだ。助かったのは丹砂の採掘のために地下にいた、わずかな坑夫たちだけ。彼らは始め、なんとか都市を復興させようとしたんだ。でもできなかった。プロメテウス火山は500年前の大噴火から活発に活動が始まって、毒の灰を吹き続けるようになってしまったんだ」