第6章 ホワイトガーデン
「ここにはずっと、プロメテウス火山の噴火から逃れた人々が住んでいた。地上は毒の灰に埋まり、外に出られない中、彼らは細々と500年間、私たち自動人形の修繕をしてくれた。いつかまた都市が復活することを願って……なのにみんな、殺されてしまった」
広い空間に出ては立ち止まった。そこは大ホールのような、広いドーム状の空間だった。
口を開けて、ぽかんとベポは周囲を見回した。
「どうして地下なのに明るいの?」
「なにか光ってるな……苔?」
壁面にへばりついた光源を触り、シャチは感心した声を上げた。
「へぇ、光る苔を照明代わりにしてるのか」
「さっきの道にもこの苔を植えればいいのに」
真っ暗闇で頭をぶつけたマリオンが口を尖らせる。
「そんなことをしたら、ここへ敵を案内してしまう」
冷静に言うスイレンに、は首を傾げた。
「敵がいるの?」
スイレンは黙って、目を伏せた。
「スイレン! よかった、無事だったのか!」
光る苔の密集するひときわ明るい場所で工具を広げていたひょろりと背の高い少年が、駆け寄ってきた。背が高いので大人びて見えるのが、年は15歳くらいだ。
「モクレンとシュスランは?」
「……破壊された。生き残ったのは、私だけ」
少年は息を呑み、それでも「君が無事でよかった」と心から安堵した様子を見せた。
そしてやっと、たちに気づく。
「君たちは――」
「です、こんにちは」
緊迫した雰囲気をものともせずに、はにっこり笑っていつものようにあいさつした。
「ええと――?」
ひどく困惑して、少年はスイレンを見やった。
「ブリキ兵に破壊されそうなところを助けてもらった。プロメテウス火山が噴火の兆しを見せたから、安全のため連れて来たの」
「スイレンを助けてくれたのか。ありがとう。僕はU-2。カトパターク最後の人形師」
差し出された手を握って、はブンブン振り回した。スイレンとは違い、U-2は生身の人間の少年だった。
「島の住人なのか? 教えてくれ、この島は一体――」
シャチの質問に、U-2は答えた。
「ここは滅びゆく島だよ」