第6章 ホワイトガーデン
「そんなつもりは……」
「船長がそういうつもりじゃなくても、平等に扱ってもらえなきゃクルーは落ち込むんですよ。とくになんか、変なとこ自立心旺盛だし」
青い顔でローは考え込んだ。荒療治だったがおとなしくなってくれて、密かにペンギンはほっとする。
「日暮れまで待ちましょう。それで戻らなきゃ、一人で行かせた俺の責任だ。槍が降ろうが硫酸が降ろうが、探しに行きますよ」
心配で死にそうな顔をしながら、船長は頷いた。
話はまとまったかに思えた――が、ゴトン、と甲板のほうから音がして、船長は「たちか?」と出迎えに行こうとする。
「見てきます。キャプテンは休んでて」
ゴンザを連れてペンギンは甲板に向かう。何人もいるような音と揺れだが、奇妙だった。なら「ただいま!」と元気よく声をかけてくるのに。
猛獣が間違って乗り込んできた可能性もあるので、念のため武器を持って、ペンギンは甲板へ続く扉を開けた。
「うわ!?」
そこにいたのは子供ほどの大きさの、ブリキの機械だった。ドラム缶に金属のボウルをかぶせて目をつけたような、簡単な造作。関節式の細い手足をギーギーと動かして、無数の小さなブリキ兵たちは船に侵入しようと甲板をよじ登ってくる。
「なんだこいつら……!」
「船に入ってくるんじゃない!!」
ペンギンとゴンザは応戦するが、多勢に無勢だった。砂糖の塊に群がる蟻の集団みたいに、小さなブリキ兵たちはキリなく湧いてくる。
「おい、なんの騒ぎだ……」
うるさそうに顔をしかめてやってきた船長は、甲板の光景に目を丸くした。
「ROOMーー!!」
能力領域を広げて船を襲う小さなブリキ兵たちを両断するも、敵は尽きることがなかった。
「キャプテン……!!」
群がられ、抑え込まれたペンギンが声を上げるが、同じく小さなブリキ兵たちに押し倒された船長からの返事はなかった。