第6章 ホワイトガーデン
大刀に手を伸ばし、人形の少女はそれを渾身の力でブリキ兵に投げつけた。巨大な矢のように大刀はブリキ兵に突き刺さり、それを追って彼女は風のように駆ける。
突き刺さった大刀を引き抜き、彼女は返す刀で4本の腕を切り落とした。
「壊れろ……!」
着地と同時に再び地面を蹴って飛び上がり、倒れ込むブリキ兵の頭を真っ二つにかち割った。動力部にまで攻撃は届いたようで、ブリキ兵は爆発して四散する。爆風でベポたちはころころと転がった。
「すごい。キャプテンみたい」
感激しては拍手と歓声を送った。
「あなたたちは……」
明らかに戸惑った様子で、人形の少女は声を上げる。
はにっこり笑ってあいさつした。
「こんにちは。私は」
「こ、こんにちは。……私は戦闘用自動人形ADBー2号」
「せんと……? それが名前なの?」
予想外に長い名前だった。呼びにくい。
「通称は、スイレン。呼びにくかったらそう呼んでもらって構わない」
「ケガはないかい、スイレンちゃん」
ブリキ兵に蹴飛ばされて役に立っていなかったマリオンが、そんな事実などどこにもなかったように、むしろ自分がブリキ兵を倒して人形の少女を助けたと言わんばかりの態度で気遣った。
「顔の右半分を損傷。でも壊れたのはセンサーだけで可動には問題ない」
「痛い?」
心配そうにするに、スイレンはたじろいだ。
「私は人形だから痛覚は――」
「痛くなくても、女の子が顔の半分にケガしてそのままにはしておけないね」
は予備で持ってきた手ぬぐいで、損傷したスイレンの顔を覆った。
「あ、ありがとう……」
ひどく戸惑った様子で、スイレンは顔に巻かれた布に触れる。
「キャプテンなら治せるかな?」
どうかなー、とシャチは腕組みした。
「前に壊れたラジオ直そうとして、バラバラにしちまった人だし。人体以外は専門外だと思うぜ」
「バラすのは得意だけど、組み立てるのはあんまり得意じゃないんだよねー、キャプテン」
ベポまで腕組みしてうんうん頷いている。