第6章 ホワイトガーデン
対する銀髪の少女はそんなブリキ兵にたじろいだ様子もなく、自分の身長よりも長い大刀を振り回して戦っている。黒いワンピースに黒いロングブーツ姿で、華奢な外見にも関わらず、ブリキ兵の重い攻撃を受け止め、大刀を持ったまま軽々と舞うように移動する。
「……女の子は金属の鎧を着てるの?」
「ううん、どうして?」
「反響音が肌の柔らかさじゃないから。それに足音が――」
少女の足音はひどく重かった。大刀を持っていることや、敵の攻撃を受け止めているのを除いても、おそらく150キロ近くある。
(生きてる人間の音じゃない。どういうことだろう……)
ブリキ兵に少女は押され始めた。4本の腕による攻撃を捌ききれず、顔に丸鋸を食らう。
「女の子になんてことしやがる!!」
止める間もなく、シャチとマリオンが飛び出した。
「えええ――!」
ペンギンに危ないことはしないと約束したのにどうしよう、とは混乱した。
二人はブリキ兵に掴みかかるが、今にも丸鋸で解体されてしまいそうだ。
「どうしよう!?」
「ベポ行って! 二人を助けて!!」
「アイアイ!」
もうこうなったら仕方ないと、も飛び出した。
戦う両者のうち、どちらが悪いのかもわからないが、とにかくシャチとマリオンを殺させる訳にはいかない。
「大丈夫?」
は負傷した少女を下がらせるべく、声をかけた。やはり生きている人間の音はしない。間近で接するとよりハッキリとそれを感じた。
助け起こすために握った彼女の手は、都市に倒れていた人形たちと同じ感触だった。には見えないが、負傷した彼女の顔の中にはぎっしりと歯車とケーブルが詰まっていた。
「どうして人間がこの島に……」
声は滑らかで、人形とは思えなかった。一体何者なんだろうとは不思議に思い、しかし尋ねる間もなく、ベポの悲鳴が上がる。
「俺お肉にされちゃうよー!!」
丸鋸でベポが今にも解体されそうだった。
「ベポは今、脂身だらけでおいしくないからやめて!」
ちゃんと痩せるまでの時間稼ぎのつもりだったが、ブリキ兵はもともとベポを食べるつもりはなかったので、の悲鳴に耳を貸すこともなく、丸鋸をベポを振り下ろす。