第6章 ホワイトガーデン
「そんなすぐには。何年も吸い続ければ、子孫の寿命が短くなるくらいだってキャプテンは言ってたよ」
「あれ? じゃあキャプテン――」
心配そうにするベポに、は「うん」と頷いた。
「……子供の頃、この毒で死にかけたことがあるんだって。今も耐性が弱いみたい。すごく苦しそうだった」
「それを伝えるためとはいえ、が一人で戻ってくるなんて――。船にはペンギンとゴンザが居ただろ」
シャチの口調は一緒に来なかった二人を非難するものだった。
「私が二人はキャプテンのそばにいてって頼んだの。この島、私達以外に誰かいる。かすかだけど争う声が聞こえたの」
の言葉に彼らは顔を見合わせ、「実はちょうどその話をしてたんだ」との手を引いた。
◇◆◇
「この街、どうも火砕流に飲まれたみたいなんだ。多分あの火山が原因だよ。噴火のあと、一瞬のうちに街も人も全部飲み込まれちまったんだ」
都市の遺跡を回って立てた推論を、シャチはの手を引きながら説明した。
「埋まっちゃったの? あれ、でも――」
「そう。つまりこの遺跡、誰かが掘り起こしたんだ。現に東のほうはまだ発掘が途中だった。で、その理由なんだけど」
手を引かれて、は遺跡の中でもひときわ大きな建物の中に入った。音の反響具合で、それが普通の家を10軒以上合わせたような大きさだとわかる。
「お金持ちの家?」
「いや、たぶん当時の役場かなにかだと思う。ここに大きな壁画があるんだ」
にはどうしても見えないので、「どんな絵?」と彼女は首を傾げた。
ベポとマリオンも一緒になって、そこに描かれた壁画の内容を説明した。
「中央に描かれているのはあの火山だよ」
「その周囲に、火山を崇める人間がたくさん描かれてる」
「火山の地下にはお宝があるって描かれてるんだ!」
「お宝……?」
うさんくさい話に、は眉をひそめた。対象的にシャチたちの声は興味津々だ。