第6章 ホワイトガーデン
「ペンギンは船に居て」
甲板に出るなり、は声を潜めて古参のクルーに頼んだ。
「、それは――」
と同じく、手ぬぐいで鼻と口元を覆ったペンギンは抵抗を示した。
「キャプテンには言わなかったけど……さっき船に入る前、かすかに争うような声が聞こえたの。この島、誰かいるよ。船を襲われたらゴンザ一人じゃひとたまりもない。ペンギンは残って」
「ならも残るべきだ。あいつらだって日が暮れる前には戻ってくるだろ。それを船で一緒に待とう」
「ベポたちは何も知らないんだよ。灰のことも、争ってた誰かのことも。楽天的に戻ってくるのを待つのはリスクが高すぎるよ」
それでもペンギンは首を振った。悲しそうには顔を曇らせる。
「私を信用してくれないのは目が見えなから? それとも女だから?」
「信用してないわけじゃない。心配なんだ」
「ベポやシャチなら一人でも行かせるでしょう? お願い、私のことを仲間を思ってくれるなら平等に扱ってほしい」
「船長命令だ。破るわけにはいかない」
「キャプテンもみんなも……過保護がすぎるよ」
言っては甲板から飛び降りた。そしてまったく危うげなく、着地する。倍の高さでも大丈夫だろうと感じさせる運動神経だった。
「見えないからよくいろんなものにぶつかったり転んだりするけど……そこまでどんくさくないんだよ、私」
「わかってるよ。でも敵に鉢合わせしたらどうする?」
「私の耳なら敵より確実に早く気付ける。逃げるか隠れるかするよ。ダメそうなら無理はせずに船に戻る、約束する」
「……わかった。キャプテンには俺からうまく言っておくよ。でも、くれぐれも気をつけて」
「うん。……信じてくれてありがとう」
晴れやかな笑顔で手を振って、は駆け出した。仲間たちを助けるために、たった一人で。