第6章 ホワイトガーデン
「キャプテン!?」
人形を見つけてからずっと黙りこくっていた船長の異変に、は彼に駆け寄った。
こらえきれずに、ローは道の端にえずいたところだった。
職業柄、死体は見慣れているはずなのにどうしてもダメだった。白い街に転々と転がる死体――それはまさしく、故郷が滅んだあの夜そのものだった。
ずっと封じ込めてきた記憶が蘇る。親しい人間が物言わぬ物体になった後の濁った目、重なり合った死体に隠れた時の気持ち悪い温度――そのすべてが鮮明に思い出されて、嘔吐が止まらない。
「大丈夫……?」
水筒の水でハンカチを絞って、が顔を拭いてくれる。最悪な気分が少しだけマシになってありがたかった。
「キャプテン船に戻ろう。横になったほうがいいよ」
「平気だ――」
「だめ。ほら、行くよ」
聞き分けの悪い船長の手を引いて、は「キャプテン船に送ってくるね」とシャチたちに声をかけた。
「うわ、どうしたのキャプテン!」
「顔が真っ青ですよ!」
「俺が怖がらせたから!?」
マリオンの言葉を否定する元気もなく、ローはに手を引かれて船への道を戻った。
「、一人で戻れる。ついてこなくいい」
「だめ。具合の悪い人を一人でなんて行かせられないよ」
「が一番、上陸を楽しみにしてただろ」
「冒険よりキャプテンのほうが大事」
きっぱりと言い切られ、ローは手を引いてくれるの手を握る力を強めた。
見えなくてもの足取りは迷いがない。船への帰り道を正確に辿っている。道に太い根が張り出していても、来る時に場所を全部覚えたのか、杖で触ることもなく、らくらくと避ける。
「……、頼みがある」
「なあに?」
「10秒だけ……抱きしめてもいいか。別に変なことは――」
「いいよ」
最後まで聞かずに、はローに向かって両手を広げた。ぎゅっと抱きしめ、ローはに頭を擦り寄せる。