第6章 ホワイトガーデン
「え、なに?」
見えないだけが状況がわからず困惑する。
「死体があるんだよぅ……っ」
怯えてベポはに抱きついた。
「死体?」
杖で石畳の道を叩いて、は首を傾げた。音の反響具合でには周囲の状況が見える。道に何かがあるのはにもわかった。でもそれは生き物のような柔らかいものではない。もっと硬い感触のものだと反響音はに言っていた。
死体の前にしゃがみこんで手を伸ばしたを、彼らは止めようとした。だがは構わず、自分の手でそれを確かめる。
上に積もった灰をどかし、彼らが死体だというものには触れる。その感触は思った通り、生き物のそれではなかった。
「死体じゃないよ」
え、と彼らはおそるおそるの手元を覗き込む。
「もっと硬い感触。確かに人の形はしてるけど、これは――」
「人形だ」
が顔にかかった灰をどかしたことで、彼らもハッキリとそれを理解した。
それは人の大きさと可動式の関節を持った、精巧な人形だった。肌の壊れた内部には、ぎっしりと歯車とケーブルが詰まっているのが見える。
「気持ち悪い、なんでこんな人形が転がってるんだ……」
転がっている死体がすべて人形であることを確かめて、別の恐怖に彼らはおののいた。都市が滅んで数百年は経っている。よく考えたらその時の死体がこんな原型を保っているわけがないのだ。
灰の積もり方からして、人形がここに置かれたはせいぜいここ数ヶ月のことだろうと思われた。それもまるで置かれたというより、何かの攻撃を受けて倒れたような――その証拠にどの人形もよく見ると体のどこかを大きく損傷していた。