第6章 ホワイトガーデン
(海賊がしたいことをするには……強さが要るんだね)
奴隷のときはそんなこと、考えたことがなかった。反抗したって締め付けが強くなるだけ。逃げ出してもには行く宛がないから、海賊船の中でどううまく立ち回るか、奴隷仲間を庇えるかが大事で。
(キャプテンはすごいなぁ……)
全部わかってて彼は強くなるための努力を惜しまなかったんだろう。だから今の彼があり、自分の命とクルーの命まで抱えて、この「海賊の墓場」と呼ばれる海を行こうとしている。
(そっか、人を尊敬するのってこんな感じなんだ……)
セイロウ島で安易にケンカしすぎた自分をは反省した。しかもケンカの理由がどれも子供っぽすぎた気がする。
船長はきちんと話を聞いてくれる。機嫌で暴力を振るったりもしない。だから安心して、嬉しくて、幸せで、子供みたいにはしゃいでしまったのだ。
今後はちゃんと、尊敬する人にはそれにふさわしい態度を取ろうとは決めた。
(それに強くならなきゃ……助けてあげたい人を助けられずに、悔しい思いをしなくて済むように)
◇◆◇
「あ、キャプテン! 街があるよ!」
森が開けてベポが声を上げた。
「街……? でも何も聞こえないよ」
人の声も生活音も何も聞こえず、は困惑した。こんなに静かな街なんてありえない。
「街というか……街の廃墟だ」
あまりの光景に緊張してシャチは硬い声を上げた。
そこに広がっていたのは息を呑むような大都市だった。数千人が暮らしていただろう都市が、白い森に隠れるように広がっている。滅んで有に500年は越えるだろう、石造りの家々。道には石畳が引かれ、辻には広場、市民が集っただろう大きな浴場に、闘技場のようなものまである。
なのに今は人一人おらず、灰をかぶって真っ白に染まっている。