第2章 グランドライン
(早いところ島を見つけて、町でいろいろ手に入れねぇと)
不便な服にもは不満を示さないが、見ていて忍びない。
「ああ、なんだ。みんなこっちにいたのか」
盆にスープの入ったカップを並べ、ペンギンが遅れてブリッジにやってくる。
「天候がこう落ち着いてるなら、食堂に呼べばよかったスね」
「たまにはいいだろ、いつ急変するかもわからねぇ。ベポ、シャチが下にいるから呼んでやれ」
「アイアイ、キャプテン」
水漏れした区画の排水作業にあたっているシャチを伝声管で食事に呼ぶベポを横目に、ローは2つ目のおにぎりに手を伸ばした。のおにぎりは小さいので一個ではとても足りないのだ。
「キャプテン、それ梅干しだよ」
一口食べるのと同時に、の忠告が入る。丸く欠けたおにぎりは内部が確かに赤く染まっていて、ローは危うく吹き出すところだった。
顔をしかめて船長は食欲旺盛そうなシロクマにおにぎりを押しやる。
「ベポ、やる」
「えー!」
「食べかけ人にやるのやめてくださいよキャプテン……」
もっともなクルーの諫言は聞こえなかったことにして、ローは次のおにぎりに手を伸ばす。しかしおにぎりの見た目はみんな一緒なので、念のために確認した。
「これは?」
「さあ」
作ったペンギンの返答は無責任なものだった。キャプテンの機嫌は一気に悪くなった。
「そもそもなんで梅干し入れんだよ。俺の船に梅干し乗せんなって言ってんだろが」
「栄養豊富で保存の効く貴重な食材になんて暴言吐いてんですか」
「そんなに梅干しが好きなら梅干しの船にでも乗ってろ」
「あったらぜひそうしますよ。船長が全力で降参する船なんてほかにないでしょうからね」
「もー、ケンカしないで。それシャケだから」
おろおろして二人を見比べるベポとは対象的に、は物怖じした様子もなく、昆布のおにぎりをもぐもぐしながら呆れて言った。
「…………」
船長がおにぎりを割ると、中身は本当にシャケだった。