第2章 グランドライン
グランドラインに入って4日目――。ハートの海賊団の潜水艇・ポーラータングは漂流していた。
「キャプテン、ごめん……」
「ベポを責めたって始まらねぇだろう」
うなだれる航海士の謝罪を、船長はすげなく聞き流す。言葉通り怒った様子のないローに、ベポはじーんと涙をにじませた。
季節・天候・海流・風向きの全てがデタラメと言われるグランドラインの航海は、やはり並大抵のことではなかった。
何より指針が取れないのが痛く、進路を見失った今の状態はとても「航海している」と言えたものではない。
帆走しながらこの4日の間にシケに合うこと8度。星の位置で方角の特定を試みるも、天候不良で一度として星空を拝めていない。
「当面の最優先事項はログポースの入手だな。グランドラインで手に入れようと思ったのが甘かった」
グランドラインではコンパスが使えず、方位を知るには特殊な羅針儀がいると情報は入手していたのだが、北の海での入手は困難だった。最初の町で手に入れようと結論してグランドライン入りしたのだが、まさか最初の町にもたどり着けずに漂流することになろうとは。
「ごめんよー、キャプテン……」
「だからお前のせいじゃないだろ。判断が甘かったのは俺の責任だ」
「なあに? ケンカしたの?」
ペンギンと一緒に食事を作りに行っていたが、おにぎりの並んだ大皿を抱えてブリッジに入ってきた。
ケンカじゃないと二人は否定したが、そもそもはあまり気にしていないようで、「初めておにぎり作ったよ」と嬉しそうに報告する。
大皿にはペンギンが作ったらしき大きめのおにぎりと、が作った小さめのおにぎりが親子のように一緒に並んでいた。
「キャプテンは中身なにがいい?」
「梅干し以外」
「はい、じゃあおかかね」
上機嫌で小さなおにぎりを渡してくるに、思わずローも小さく笑った。
漂流という深刻な状況だが、がずっと楽しそうにしているおかげで船の雰囲気はまだ明るいものだった。
「ベポは中身なにがいい?」
「んーとね、ツナ!」
「はい」
おにぎりを渡すの手から、つなぎの袖がだらんと垂れる。着の身着のままだったにペンギンが自分の服を貸したのだが、サイズがあちこちずいぶんあまってしまっていた。