第6章 ホワイトガーデン
船長の腕に抱きついては「船を降りるのは嫌」ときっぱり言った。
の頭をくしゃくしゃ撫でて、船長も「てめぇなんかにやるか」と冷たく言い放つ。
「代わりにシャチならやるぞ。持ってけ」
「ちょ! キャプテン見捨てないでくださいよ!!」
「お前失恋旅行に行きたがってたろ」
「男と二人で行く失恋旅行がありますか!」
「女装させりゃいいだろ」
「嫌ですよ!!」
本物の女の子と女装男子の間には、決して乗り越えられない深くて長い溝があるのだとシャチは力説した。
「いやん、そんなこと言って意外とはまるかもしれないわよ?」
腰をくねらせ、マリオンはシャチの腕に抱きついた。
船に密航したときはばっちり化粧をしていたせいか、マルガリータと瓜二つだと思ったが、ノーメイクだと間違えるほどは似ていない。シャチは断固拒否した。
船は川に入り、島の内部へと進んでいく。どこまでも灰のかかった白い森で、人の気配はない。
「ホワイトガーデンの名のとおりだな……」
不気味な雰囲気に、ペンギンは不安そうに周囲を見回した。
「、何か聞こえるか」
船長の問いかけにずっと耳をすましていたは答えた。
「んー、猛獣の唸り声? 会いに行く?」
「猛獣はやめとこう、ちゃん」
青い顔でマリオンは首を振った。にだけ異常に甘い船長なので、「よし行くか」と言い出しかねない。
「でも、ベポみたいに喋るかも」
「喋らないって! 喋るベポが変なの!」
「すいません……」
とばっちりでベポが落ち込んだ。
わずかに道のようなものがあるのに気づいて、船長は船を停めさせた。
さっさと甲板から飛び降りて、「上陸したいやつは?」とクルーたちに尋ねる。
「はい!」
元気よく手を上げたのはだけだった。