• テキストサイズ

白夜に飛ぶ鳥【ONE PIECE】

第5章 密航者


 ローの手からペンが落ちた。ベポは顔を上げ、いまだかつてこんなに驚いた船長の顔は見たことないな、とぼんやり考えた。
 ローはベポには一言もなく、診察室を飛び出していった。のところに行ったんだろうと思い、ベポはほっと息を吐く。

 ふと彼が広げていたカルテが目に入り、きゅう、とハートの海賊団のシロクマは鳴いた。

 それは丁寧に書かれたのカルテだった。対象的に一緒に置かれていたノートには、オペオペの実の能力を含めたあらゆる治療案が書き殴られている。
 考えては否定し、あらゆる医学書を読み漁り、どうにかの目を治せないかと、もがき苦しむ様がそこからは読み取れた。


◇◆◇


 ローがを探して甲板に出ると、彼女はゴンザと釣りにいそしんでいた。

「そんなにいっぱいいるの? まずい果物食べた人」
「そうだなぁ、最近の有名どころで言えば火拳のエース。彼はメラメラの実を食べた炎人間。海軍で言うなら三大将だ。赤犬はマグマグの実、青キジはヒエヒエの実、黄猿はピカピカの実を食ったという話だ。ほかにもグランドラインにはたくさんの能力者がいる」

 ペンギンの時とは打って変わり、は興味深そうにゴンザの話に耳を傾けている。

「それは困るね」
「そうか?」
「そんなにたくさんまずい果物が世の中にはあるってことでしょ? 気づかずうっかり食べちゃったらどうしよう」
「能力者になるのは嫌か?」
「嫌。キャプテンが溺れても助けに行けなくなっちゃう。カナヅチになるのは絶対嫌」

 もう怒ってないのかとローは少しほっとしたが、引きがあったゴンザには「ウニ釣れた?」と聞き、希望的観測だったのを知った。

「……ウニが釣れたらどうする気だよ」
 
 船長に気づいていなかったは声をかけられびくっとしたが、そっぽを向いて「詐欺師にぶつけるだけだから思い当たる節がない人には関係ないよ」と不機嫌に言う。

「マリオン用か」
「マリオンは別に何も嘘ついてないよ!」

 ケンカを始めた二人をゴンザはおろおろと見比べ、ローに手を振られて夕飯のカジキを持ってそそくさと船内に入った。
/ 528ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp