第5章 密航者
「カメって何?」
がベポに尋ね、昼寝から目を覚ましたベポが「シャチがしつこくキャプテンに絡みすぎて、ペットのミドリガメと意識を入れ替えられた事件のことかな?」と懐かしそうに語った。まだ航海に出る前の話だ。
「シャチがカメになっちゃったの?」
「うん」
「……をベポにしてやろうか」
「本当に!? なりたい!」
やっと能力のことには興味を持ち始めた。
「そんなキャプテン、入れ替えるなら俺が――」
立候補するペンギンを、ローは望み通りマリオンと入れ替えた。
鏡を見てマリオンが悲鳴をあげる。
「ぎゃー! むさいおっさんになった!」
「うるせぇ、お前だって10年後はおっさんになるんだよ! しかしこの美少年の顔は悪くない」
鏡を見ながらムフフ、とペンギンはスケベな笑い声を上げた。
「は! そうかもう大捜索に怯えることはないってことか! くそう、でも一生このおっさんの姿でいるのは……っ」
マリオンはなにやら葛藤した結果、「じゃあその体、おっさんにやるよ!」と言い出した。「俺を代わりに差し出す気かてめぇ」とペンギンが殴りかかり、「俺の体を殴るわけにいかないじゃねぇか!」と思い出す。その光景はまさしくシュールなコントだった。
は何やら楽しそうな気配にわくわくし始めた。
「キャプテン、早く早く!」
「ああ――いや」
ローはケンカするペンギンとマリオンを元に戻すと、ROOMを解いた。
「ベポにもうなった? まだ?」
自分の体をペタペタ触っては首を傾げる。
「……ベポにはしてやれない」
「ええ! どうして!?」
「には無理だ」
「どうしてそんな意地悪言うの!」
をなぐさめながら、ベポも困ったようにローを見た。連れて行け、とローは診察室のドアを指差す。
「行こう。ええと……そうだ、何か甘いおやつを食べようよ! たっぷりハチミツかけて!」
「うん……」
は頷いたが、しょんぼりと肩を落としている。
「キャプテンの嘘つき。詐欺師」
批難に何も言い返さず、ローはとベポが出ていくと、しっかりと診察室のドアを閉めて鍵をかけた。