第1章 奴隷の少女
まさか聞き返されるとは思っていなくて、ローは考え込んだ。
行きたい場所と問われてもとっさに何も出てこない。代わりに浮かんだのは命と心をくれた恩人のこと。
ドフラミンゴと海軍、政府まで敵に回し、それでも自由に生きていくことをあの人は望んでくれたから。
「ーーどこでもいいんだ。行きたい場所に、誰にも指図されずに行くのが目的だ」
そしていつか、やつを殺す。そのための旅。
「海賊王は?」
「邪魔する奴らをみんなねじ伏せていきゃあ、最後にはそうなる。心配するな」
ニヤリと笑うとクルーたちから歓声が上がった。
「キャプテーン!」
「一生ついてくぜ!」
「大好きだー!」
信じられないくらい、今まで自分がいた海賊団とは雰囲気の違う船に、戸惑いながらもはある予感を覚えていた。この船が大好きになる予感だ。
彼らと、キャプテンと一緒に航海するのが楽しみで仕方ない。
「私……行きたい場所できた」
「へぇ?」
「全部」
どんな島があるのかは知らない。でも彼らと一緒ならどんな場所でもきっと楽しくて、全部行ってみたくて、ずっと旅をしていたいって思ったのだ。
船長は笑い、「強欲だな」と言った。
「だめ?」
「いいや、海賊らしくていい」
船長の言う海賊と、の知る海賊はまるで別物みたいだった。
海賊なんて大嫌いだったのに、彼らにはその大嫌いな部分がひとつもない。
「さあ、行くぞ。ここからが航海の本番だ」
の旅はこうして始まった。彼らと一緒に。