第5章 密航者
「、正直に言え。お前ベポに自分の食事、半分やってるだろ」
船の診察室で行われた船長の尋問に、はぎくりと体をこわばらせた。
「そそそ、そんなことないよ」
「ウソつくなら二度とベポとのガルチュー禁止だ」
「だってベポがお腹すいて死んじゃうって言うから……!」
あっさり陥落しては温情を求めた。
「ベポが死んじゃうなんて耐えられない……」
「あのメタボが少々食うもの減らしたくらいで死ぬかよ。が先に倒れるぞ」
「私は大丈夫だよ。3日に一回くらいの食事で生きてたし」
「それを基準にするんじゃねぇ!」
とにかく、とローはへの対策と罰をまとめて告げた。
「栄養不足だ。点滴するから腕出せ」
「針は嫌!」
両腕を背中に隠してはブンブン首を振った。
「マリーアのところで克服しただろ」
「腕に針を刺すなんて無理……っ!」
「ちゃんと自分の食事をしねぇからだ」
「嫌!」
は往生際悪く、船長の診察室から逃げ出した。
「こら待て!」
狭い潜水艦の中で、は船長の言うことも聞かずに全力疾走する。能力で入れ替えようとした寸前、は反対側から歩いてきた人間にぶつかった。
「助けてマリオン! キャプテンに針で刺される!」
「やっぱりあいつそんな趣味が!? 猟奇好きな顔してると思った!」
「誰が猟奇好きだ!! 解体されたくなきゃを捕まえろ!」
すぐに「解体・解体」言うから猟奇的な人間だと思われているという思考にはならず、ローはマリオンに命じた。
悩んだ末に決死の覚悟で、マリオンは両手を広げてローに立ちはだかった。
「どんな事情があろうと女の子に針を刺すのを黙ってみてる訳にはいかない!!」
問答無用でローはマリオンを両手足と頭と胴に分解した。
「ぎゃー!! 猟奇殺人!!」
「殺してねぇだろ、うるせぇな」
狭い通路に散乱するマリオンの部品をよけようとして、ローは彼の頭につまずいた。
「邪魔だ、どっか行ってろ」
「この状態でどうやって!?」
首だけのマリオンはわめくが、ローは聞いていなかった。廊下の先でが真っ青な顔をして座り込んでいたのだ。