第5章 密航者
「ふざけんな!! その上、国を挙げて大捜索しているような厄介なガキを押し付ける気か!?」
『気づいたら居なくなってたんだよ。マルガリータが資格を失っても、自分が一緒にいたら人質にされて危険は変わらないと思い悩んじまったんだろう。
姉思いのいい子だ。どのみちログを辿れば、その国を必ず通る。命をかけてでも正当な王を選定しに帰ると言うんだよ。送ってやっておくれ』
言うだけ言って、マダムは通話を切った。ふざけんなあのクソババア!と毒づいて、ローは受話器を叩きつけた。電伝虫がびっくりする。
「キャプテン、電伝虫をいじめないで」
日々せっせと世話をしているが怯える電伝虫をそっとかばって言った。ローの扱いが雑なので、電伝虫はすっかりやさぐれて目つきが船長そっくりになり始めていた。起きて100人ぐらい殺したけどまだ眠いみたいな目つきだ。
「名前つけたんだっけ?」
そーっとの手のせんべいに手を伸ばしながら、ベポ。
「うん。電伝虫のデンデン」
「電伝虫デンデンかー。上から読んでも下から読んでも電伝虫デンデンだね」
ばりばりとせんべいをかじって、ベポはいい名前だと感心した。すっかり気をそがれてローはツッコむ。
「……下から読んだらンデンデシムンデンデだろ」
「なんか未知の生物っぽいですね」
とぼけたことを言うゴンザに視線が集中し、「何か変なこと言いました?」と彼は焦った。ハートの海賊団はが来てからちょっと変わった海賊団になりつつある気がする。
「ちゃん、俺のこともペットとして飼って」
の手を握ってマリオンは懇願した。基本的に動物の世話が好きなはちょっと揺れた。
「キャプテンがいいって言ったら――」
「ダメだ。元の場所に捨ててこい」
「元の場所って……船倉?」
「そこでいいから!」
「良くねぇ! セイロウ島には戻らねぇから、次の島に置いてくぞ」
「じゃあ、それまで飼っていい?」
くーんとマリオンはプライドもなく犬の真似をした。こんなに情けない男をローは見たことがなかった。