第5章 密航者
「キャプテン、ベポが……ベポが、豚さんになっちゃった」
ショックで放心するをローはなぐさめた。
「あいつのことはもう忘れろ、。ベポはシロクマより豚として生きていくことを選んだんだ」
「選んでないよ、俺まだシロクマ!」
「うるせぇ、そんなに肥えたシロクマがいるか!」
「痩せるから! 痩せるから見捨てないでキャプテンー!」
「ならまずその贅肉売って、自分のエサ代を払ってこい!」
贅肉や内臓はそう簡単には売れないので、哀れな二人と一匹は金貸し業のおじさんたちから仕方なく借金して精算した。
「早く出航しましょうキャプテン」
請求書を渡してさっさと帰った愛しのミネルヴァちゃんに呆然として、失恋を忘れようとするかのようにシャチは旅立ちを急かした。
ペンギンとベポも同調する。
「こんな恐ろしい島にあと1秒でもいたら尻の毛までむしり取られちまう」
「お肉にされちゃうよー!」
「ならさっさと船に乗れ、バカどもが」
も、とローが促そうとした時、「ー!」と呼ぶ声がした。走ってきたのはマルガリータだった。
「間に合ってよかった。急に出航するって聞いたから」
「キャプテンがこれ以上居ると、サギィに貞操を奪われるからって」
「違う! この島の用が全部済んだからだ!!」
マルガリータはローの主張にはまったく興味を示さず、「はいこれ」との頭に白い布をかぶせた。
それはもこもこの、ベポの顔と耳がついた帽子だった。
「おそろいを欲しがってたでしょう?」
「すごい! マルガリータ、作ってくれたの!?」
「また会いましょう。絶対よ。約束ね」
「うん」
マルガリータはの顔にキスしまくって、別れを惜しんだ。
(好きな男はいないってそういうことか……)
マルガリータのキスがの唇にも及びそうだったので、ローはさりげなく阻止して「ほら、もう行くぞ」と抱き上げて甲板のペンギンに渡した。
マルガリータには睨まれるが、痛くも痒くもない。