第4章 白竜の彫師
ためらっているとに後ろからぺろーんと服をまくりあげられ「セクハラだぞそれ!?」とローはわめいた。サギィのセクハラ防止にを連れてきたはずなのに、まさかの倍になった。作戦を間違えたかもしれない。
「、お兄さんの手を押さえてて」
「ん、こう?」
施術台に横になったローの両手を、は頭の上で押さえ込む。は非力なので振りほどくのは難しくないが、すぐそばに針があるので下手に動けば危険だ。
「ちょっと待て、なんで手を押さえる必要がある!?」
「あたしの趣味」
施術台のローにまたがって、キランとサギィは鋭利な針を輝かせた。目がやばい光を放っている。
「痛くするからいい声で啼いてね」
「啼くか!」
「キャプテン、手握っててあげるね」
「お前どっちの味方だ!?」
「え、もちろん今はキャプテンの味方だよ?」
「なら何でこうなる!」
「……いいタトゥーを彫るため?」
純粋な瞳で言われてローは抵抗の気概をなくした。こんな敵より厄介な味方がいてどうしろと。
「じゃ、針入れるね。泣き叫んでもいいよ」
「……っ!!」
サギィの言う通り、これまでとは比べ物にならない痛みにローは声を殺した。
痛みだけならなんとかなるのだが――。
「キャプテンがんばって」
押さえつけた手にキスされ、冷静でいられない。
「それやめろ!」
「ねー、これ終わったらいっそ3人でセックスしない?」
最悪なことにはサギィの提案に揺らいだ。
「それは……心惹かれちゃう」
「惹かれんな!」
「絶対楽しいよ。明かり消せばタトゥーなんて気にならないしさ。お兄さんを泣くまでしばき倒したい」
「お前そういう趣味か! 絶対断る!!」
「船でも恋愛でもないから問題ないよね?」
「大ありだ!!」
厄介な女二人に押さえつけられて針を入れられながら、それだけは断るとローは拒否し続けた。