第4章 白竜の彫師
「……キャプテンにとって女の人に好かれるのは悪いことなの?」
「あのな……賞金首で、明日をも知れねぇ海賊に好意を寄せたところで良いことがあると思うか?」
「そんなの恋する側の自由だよ。それでもいいって好意を寄せられるのが、キャプテンが嫌かどうかじゃない?」
はずいぶんませた口をきいた。こと恋愛に関しては女に勝てる気がしない。
「……嫌かどうかで言うなら、嫌だ。俺は応えられない」
何でこんなことに言ってるんだろう。珀鉛病の告白から、に対してはずいぶん口が軽くなってる気がして、自戒しようとローは意識した。
「……絶対?」
「ん?」
妙に沈んだ声で聞かれ、ローは顔を上げてを見た。必死というか、すがるような顔をされてローは訳がわからず困惑する。
「絶対に誰にも応えないの? キャプテンのすごーく好みの人から好きって言われても?」
「すごーく好みって言われてもな……」
そういうタイプが自分にいるかどうかもよくわからない。
「先のことはわからないのに、誰にも恋愛しないって決めてるの……?」
どうしてが悲しい顔をするのかわからない。でも透き通った琥珀色の大きな瞳を向けられると、ウソもごまかすこともできなかった。
「……20年前、海賊王の関係者はみんな殺されたんだ。恋人も、子供も、疑わしいって理由だけで、見せしめのために」
あまりを脅かすようなことは言いたくないが、隠すのも卑怯だ。海賊船に乗せる以上、常ににも捕縛と収監の危険はつきまとう。
「そういう政府のろくでもなさを……俺は身を以って知ってる。そういう危険も、俺の本当のことも――何も知らない女に好意を寄せられても不幸にするだけだ」
「本当のことって……珀鉛病?」
しーっとローはの唇に指を当てた。
「うかつにその単語出すと、も銃を持って追いかけ回されるぞ」
しょんぼりとはうなだれた。フードについたクマ耳まで落ち込むように垂れ下がっている。その様子がおかしくて、ローは少し笑った。
「いつもの元気はどうした」
「キャプテンが悲しいこと言うから……どっかに行っちゃった」
「何か言ったか、俺?」