第4章 白竜の彫師
「別にいいよ、世の中はあんたみたいな無理解な人間が大半だもの。腕や足を引っ張れて怖いから、墓も病院も行きたくないって言っても誰も信じてくれなかった。信じてくれたのは、おばあちゃんだけ」
マリーアもまた、龍を見たという誰も信じない体験をしている。サギィに親身になる理由はよくわかった。
「サギィ、泣かないで。私も信じるよ」
「うん……ありがとう」
鼻をすすってサギィはに頭をあずける。
今日はもう無理そうで、ローはため息をこらえると施術台から下りた。
「俺は出直す。を頼んだ。夕方に迎えに来るから」
困った顔をするの頭を撫でて、ローは苦い思い出を語った。
「……俺の家は病院だった。そのせいか妹はよく幽霊を見たと言っては怖がってたよ。そのたびに親がきつく叱って、俺もそんなものいないと言い聞かせる側だった。患者が聞いたら不安がるからな。……怖いからそんなものいないと思い込みたいってのは当たってるよ。悪かった」
最後の言葉はサギィに向けて、ローは愛刀を掴み――ちょっと嫌な感じがしたが、無理やり振り払う――、出ていった。
◇◆◇
(どうしよう、キャプテン落ち込んじゃった……)
案の定というか、外から「痛ぇ! なんだよ!?」という声が聞こえて来て、ゴンザにやられてしまったようだ。
すっかり泣き止んでサギィが言う。
「……前から思ってたけど、あのお兄さん本当に格好いいね。惚れそう」
「だめ。サギィ彼氏いるでしょ」
「いるけど、出航しちゃう前に一回だけ抱かれたい。これも浮気かな?」
「浮気だよ! 絶対だめ!!」