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白夜に飛ぶ鳥【ONE PIECE】

第4章 白竜の彫師


「……今日はおやつは我慢しろ」
「えー! わ、私、甘いもの食べないと頑張れない病なの……」
「そりゃ治さねぇとダメだな。試しに今日は我慢して頑張ってみろ。できたら帰りに買ってやるから」

 悲しい顔ではふるふると首を振った。

「一人になってさらわれたの忘れたか?」
「ゴンザに一緒に行ってもらう」
「あいつ帰っただろ」
「まだ外にいるもん」
「出てきたところを狙ってんだろ。邪魔してやるなよ」

 これから死刑台に行く囚人みたいな顔で、はとぼとぼと施術台に向かう。
 見かねたサギィが戸棚をごそごそとあさって、「何かなかったかなー」と甘いものを探し始めた。

「あ、キャンディがあった。、食べる?」
「食べる!」

 顔を輝かせて、は小さな飴玉一つで幸せそうにする。

「悪いな」
「いつもおやつ買ってきてもらったしね。それでお兄さんは今日はどうするの?」

 ローの刺青は前腕と手の甲、指、そして背中が彫り終わっていた。

「そうだな、胸に名前を――」
「ダメ」
「それはやめときな」
「お兄さんは名前は入れちゃダメだよ」

 、マリーア、サギィの3人に一斉に否定され、ローは戸惑った。

「なんだって?」
「キャプテンは名前入れちゃダメ。絶対タチ悪いことになるよ」
「なんだよ、タチ悪いことって」

 力説するにローは困惑した。酒場の女の名前でも入れると思ってるんだろうか。

「惚れた女の名前を入れようってんじゃない。命の恩人だ――」
「なおさらやめときな。あんたは刺青で人の名前を彫る意味をわかってない。一生そのことに囚われて生きていく気かい?」
「俺の勝手だろ」

 マリーアからの好まぬ指図にムッとして、ローは言い返した。一生彼のことを忘れる気はない。なんの問題があるというのか。

「ダメだよ。だってお兄さんの後ろの人がそれはダメだって言ってるもの」

 サギィの言葉にぎょっとして、思わずローは自分の後ろを見た。誰もいない。

「……誰が言ってるって?」
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