第4章 白竜の彫師
怒ってローはを米俵のように肩に担ぎ上げた。
「はーなーしーてー! 私を盾にするのはずるいよ! 卑怯!」
「こんな体重の足りねぇ盾があるかよ。内通者を野放しにしておく訳にいかねぇだろ」
「キャプテンの応援しないからって拗ねないでよ! 大人げない!」
「拗ねてねぇ! 海賊に良識を期待すんな」
暴れるをローはおとなしくさせようとしたが、例に漏れずこういう時のは見境がなくて、危うく落っことすところだった。
「きゃあ……っ!!」
本気の悲鳴に焦り、変な力が入って手首と腰に激痛が走った。
(ああ、クソ……っ)
がケガをしないようになんとか地面に下ろしたものの、右手に力が入らない。腰と一緒にひねったようだ。
落ちる感覚にびっくりしたのか、は地面に青い顔でへたりこんだ。目が見えないには高さも状況も見えず、さぞ怖かっただろう。
「……悪かった」
「キャプテンのバカ。横暴。意地悪。大人げない」
罵倒されても言い返せない。
「だ、大丈夫か?」
ローに蹴飛ばされたゴンザは、せっかくの好機にも関わらずの心配をしておろおろしている。が落ちそうになったときもローを襲うよりを助けようとして、頭から地面に突っ込んでいた。
(……海賊には向かねぇお人好しだな)
ひねった右手に気づかれないようなんとか刀を持ち変えると、ローは左手をに差し出した。
「ほら、行くぞ。手ぇ出せ」
両手をうしろに隠してはイヤイヤと首を振った。
「拗ねんなよ、大人げない」
「……いや。キャプテン先に行って。あとから行くから」
「道わからねぇだろ」
「ゴンザに連れて行ってもらうもん」
はほとんど見ず知らずの男にくっついて、ぷいっと顔をそむけた。
血管が切れるかと思った。
「ほー?」
自分でも驚くぐらい冷淡な声が出て、びくっとは怯えて盾にするようにゴンザをローに押し出した。「殺されそうだからやめてください」と真っ青なゴンザに敬語で懇願されてもぷるぷると首を振る。