第4章 白竜の彫師
「俺はともかく……他のクルーがもしそんなことになったら、そこは船長に譲ってくれ。の気持ちはわかるが、それは俺の役目だ」
「わかるけど……わからない――その時になったら自分が何をするか。キャプテンの言うこともちゃんと聞けるか自信がないよ……」
ならその時はどんなにに恨まれようと、縛り付けておくしかない。でも果たしてそれでが諦めてくれるかは不安の残るところだった。
◇◆◇
「きょうのおやつは焼きウニだよ」
「栗だろ」
「そうだった、栗! 殻は剥いて食べてね」
「、今日は茶は後にしろよ」
ひどくショックを受けて、は「でも……まだ栗全部食べてない」と小さな声で言い出した。
「お茶くらい飲ませてあげても」
サギィまでの援護をするので、ローは「知らねぇぞ」とサギィに紙を渡した。
「なに?」
「そいつを背中に彫ってくれ」
「ええっ、どういう風の吹き回し!?」
「別に。入れたくなっただけだ」
言ってさっさとローは服を脱ぐ。人目のある明るい場所で服を脱ぐのは、実は十数年ぶりだった。ベポやペンギン、シャチの前でも、ローはほとんど服を脱いだことがない。
「……あんまりジロジロ見るなよ」
「いやー、いい体してるなと思って。この背中に墨を入れられるなんて、彫師冥利に尽きるね!」
サギィは興奮気味だ。
「タトゥーはこのサイズでいいの?」
「いや、背中いっぱいに拡大してくれ」
「オッケー、ちょっと待ってね」
サギィは図案を正確に拡大して写すため、作業を始めた。
「キャプテン、背中に海賊旗を彫るの?」
マリーアと一緒に焼き栗とお茶の組み合わを楽しんでいるの質問にローは驚いた。
「ああ。……なんでわかった?」
「なんとなく」
はこともなげに言う。