第4章 白竜の彫師
「ぎゃー! 体を真っ二つにされたー!!」
「え!?」
「うるせぇな、別に殺したわけじゃねぇだろ。自分でくっつけろ」
に疑いの目を向けられ、ローは不機嫌に言い放った。
まったり焼き栗を食べる雰囲気でもなくなってしまったので、ローはを立たせると「行くぞ」と促した。
「キャプテン本当に殺してない?」
「……それ毎回聞く気か? 殺したらちゃんと言うよ」
人が集まって来たので、ローはの手を引いて足早にその場から離れる。
人の多い商店街を抜け、民家もまばらになると、は足を止めて「さっきのもう一回、私の顔見て言って!!」と怒った。
「、なんだよ――」
「大事なことだよ。私を奴隷として鎖でつないでた海賊たちは、みんな平気で人を殺した。海軍だろうと、市民だろうと関係なく。自分に敵対した相手だからでもない――ただその方が簡単で、話が早いから。殺しを楽しむようなやつまでいた。……キャプテンのこと、そんな海賊だと思いたくない。だからちゃんと言葉にして言って」
真剣に懇願されて、ローは応えない訳にはいかなかった。
「……の言う、殺しをなんとも思わねぇ海賊団に昔俺もいたよ。そこじゃ殺して奪うのが当たり前だった」
の顔が不安に歪む。そんな彼女の頭を撫でて、「でもそんな風になるなと連れ出してくれた人がいた」とローは続けた。
「そんなバケモノになるなと言って、命がけで俺を助けてくれた。俺がいま生きてて、医者なんてやってるのも全部その人のおかげだ。だからなるべく、殺人はしない。……絶対しないとは約束できねぇけどな。その時は必ずに言うよ。許せるかどうかは、その時決めりゃあいい」
微笑んでは首を振った。
「いいの。絶対殺さないって誓って欲しいわけじゃない。私だって……キャプテンやベポが殺されたら、どんな手を使っても必ず相手を殺すもの」
(おいおい……)
ならやりかねないのが怖いところだ。命を投げ出し、相打ちになろうがためらわないだろう。そういう危うさがにはあった。