第4章 白竜の彫師
「話すのが怖いと思うことを打ち明けてくれて嬉しい。……ペンギンやベポも知らないの?」
「あー、あいつらとは白い痣がある頃に会ってはいるが、説明したことはない。もう忘れてんじゃないのか」
「……どうして私にだけ話してくれたの?」
不思議そうに言われ、ローは目を瞬いた。
「どうしてって……が聞いたんだろ」
「そうだっけ? ……違うよ、私は刺青を両手に入れた理由を聞いただけ」
「手を見るたび、そこにあった白い痣のことを思い出すから入れたんだ。なんで痣があったのか説明しなきゃ理由にならねぇだろ」
思えば両手にいっぺんに刺青を入れただけで、は何か変だと気づいたのか。
「……女の勘ってすげえな」
「ふふ、私キャプテンが愛人作ったら、どんなに隠しても見抜く自信あるよ」
「じゃあ愛人なんて作れねぇな」
「えー大丈夫だよ。みんなにはちゃんと内緒にするよ」
珀鉛病だと知っても、の態度は本当に変わらない。それがどれだけすごいことか彼女は知りもせずに笑う。
「そんな弱み握られたらが影の船長になっちまうだろ」
「憧れのもこもこ海賊団を作るチャンスね!」
「だから愛人なんか作らない」
「そんなこと言って……キャプテンは恋に落ちたら見境がなくなるタイプだってマダム・シュミットが言ってたよ」
「あんな女の話を信じるんじゃねぇ」
日も暮れて、腹も減ってきた。もう行こうとを促したものの、彼女は疲れた顔で「もうちょっと休んで行こう」と言い出した。
「また疲れたのか? さっきは自分で歩いただろ」
「あれは、その……だっていい匂いがしてたから」
が顔を向けた方向では、焼き栗の屋台がちょうど店じまいしているところだった。
(ウソついたからクルーが離れていくとか……っ)
あまりのバカバカしさにローは腹を抱えて大笑いした。
「そ、そんな笑わなくてもいいじゃない……っ」
真っ赤になっては怒る。
「を笑ったわけじゃない。焼き栗はまた明日だな。ほら、おぶってやるから」
背負ってやると、は不思議そうに尋ねた。
「ねぇキャプテン、グリってなに?」