第4章 白竜の彫師
「キャプテン聞いてる!?」
「あ、ああ、聞いてる聞いてる」
聞いてないと思われたら殴られ――もといぎったんぎったんにされそうなので、念の為2回言った。
怒りで興奮しているをなだめて座らせて、ローは説明する。
「……昔言われたときもそうやって、みたいに怒ってくれた人がいた。だから俺は大丈夫だよ」
が怒ってくれたので、もっと大丈夫になった。自分のことのように怒ってくれて嬉しい。
心配が全部杞憂で終わって――本当に、嬉しかった。
対するは握っていた拳を下ろし、「ねぇキャプテン……」と不安そうに確認する。
「……私のこと、そういうやつらと同類だと思ったの?」
「え――」
「キャプテンの中の私ってそういうイメージなの……?」
キュロットスカートを握りしめて、は青い顔でカタカタ震えだした。ショックすぎて過呼吸でも起こしそうな様子だった。
「違う違う違う! そういうことじゃない! ただその、何ていうか、どんなに優しそうな人間でも当時は珀鉛病って聞くと豹変して銃を持って追い回して来たんだ。だから、つまり――」
「そんな風に私が豹変すると思ったってこと……?」
フォローに失敗したどころか墓穴を掘ってローは激しく狼狽した。「思ってない!」と大声で言ってみるものの、次が続かない。
「そんなに信用ないの私……? ひ、日頃の行いが悪いから? キャプテンにセクハラ未遂したから……?」
「を信用してないなんて、そんなことある訳ねぇだろ。だから、ええと、頼むちょっと待ってくれ――っ」
焦るあまり全然思考がまとまらない。
があんな奴らと同類だなんて思ってない。でも珀鉛病を知っていて、気味悪がられたらどうしようと思ったのも事実だ。
「……同類だと思ってたらそもそも話してない。に隠し事はしたくないと思ったから話したんだ。……でもそれと、怖くないかどうかは別だ。今まで誰にも病気のことを打ち明けたことはない。人がどんな反応をするのかわからなくて怖かった。……わかるか?」
「うん……わかるよ」
納得してくれた様子に、ローはほっと息を吐いた。