第4章 白竜の彫師
「大丈夫。もう治った」
「本当に? キャプテン、自分の扱いは雑だもん。心配だよ」
「そうか?」
「そうだよ。みたらしだって一個しか食べなかったし……」
「いや別にあれは自分を雑に扱ってる訳じゃ――」
の真剣な様子に、こらえきれずにローは笑いだした。
「もう! 大事な話してるのに」
「を笑ったわけじゃない。自分のバカさがおかしかったんだ」
「ええ? 私キャプテンより頭いい人を知らないよ」
「へぇ、そうか」
まんざらでもないローに「そうだよ」とは頷く。
「お話してって言ったら、呪文みたいな専門用語を言い出すし……そういうとこはちょっとおバカさんかな?」
「おい」
船長をバカ呼ばわりする可愛くない口を、ローはむにむに引っ張った。
「縫合しちまうぞ」
「キャプテンが自分で言ったのにーっ」
「俺をバカって言っていいのは俺だけだ」
「ふーんだ、俺様。そんなんだから女の人にウニで刺されるんだよ」
「だからウニの話はやめろ!」
「どうしてバカだと思ったの?」
大きな目を向けられ、ローはたじろいだ。ごまかしたいのに、それをした罪悪感に耐えられなくなったばかりなので躊躇する――。
結局相当ばつの悪い思いで、ローは白状した。
「あー……が、気持ち悪いって言うんじゃないかと思った」
「なんで?」
きょとんと首を傾げられ、余計にいたたまれない。
「全身白い痣だらけの人間は気持ち悪いだろ」
「……?」
「……当時は伝染病だと誤解されて、感染るから近寄るなとよく言われたんだ。ホワイトモンスターだとか、駆除しろとか――」
「な、なにそれ……っ」
いきりたっては立ち上がった。
「誰がそんなこと言ったの!?」
拳を握り、今にも殴り込みに行きそうな様子にローはひるんだ。
「誰と言うか……医者とか、まあいろんな人間に。昔の話だ」
「信じられない! なんでキャプテン怒らないの!? そんなやつら、ぎったんぎったんにしてやるわ!」
がこんなに怒るところを見たのは初めてで、ちょっとどんな風にぎったんぎったんにするのか見てみたいと思ってしまった。