第4章 白竜の彫師
「ダメ。……おいしいから、キャプテンに食べてほしいんだよ」
団子を持って迫られ、この状況じゃ仕方なく、ローはの手から串に刺されたみたらし団子をひとつだけ食べた。
「おいしい?」
「ああ。……あとはにやる」
「ええー……せっかく仲直りしようと思ったのに」
「一個食えば十分だろ。ほら食っちまえ」
急かすとは「本当に食べちゃうからね! あとで後悔しても知らないからね!」と残りを平らげた。その隠しきれない幸せそうな様子に、本当は食べたかったのがうかがえ、ローは笑いだすのをこらえる。
「、指にみたらしついてるぞ」
「ん、どこ――」
まったくの無意識で、ローはの手を取ると指先についたみたらしを舐め取った。食べたのより甘い気がして、真っ赤になっているに気づき、しまったと思った。
「キャ……キャプテンの女たらし!」
「悪い――」
「サギィ、ウニ! ウニはない!?」
「海から取って来ないとないなぁ。取ってきてぶつける?」
「ぶつける!」
「やめろ」
ウニに罪はないがローは自分の嫌いなものリストにウニを追加した。あんな黒いトゲトゲもう二度と見たくない。
◇◆◇
「きょうのおやつはプリンだよ」
大事な本題だとばかりに訪問一番に宣言したに、サギィは笑った。
「大丈夫? また船長さんが女たらしにならない?」
「その話蒸し返すんじゃねぇ。口を縫合するぞ」
二度としないとに約束したローは、黙って仕事してくれとさっさと施術台に座る。
はマリーアとお茶を淹れ、完全に当初の目的はどこかへ行っていた。
ローの刺青は両方の手の甲、指に加え、まもなく前腕が彫り終わる。
「せっかくだからもっと大きのも入れない? 背中とか。この引き締まった体に墨が入ったら、きっとすごく映えるよ」