第4章 白竜の彫師
「熱中するタイプだろ。何かを集め始めると全部集めるまで終われなくなるとかね」
「そうかも。記念コイン集めるのが趣味で偽物にまで手を出しちゃったし」
「やめろ。その件はまだ傷が癒えてねぇんだよ……」
顔を覆ってローはがっくりとうなだれた。
通年で発行されるあるシリーズもののコインが、長年一枚だけ欠けていた。その年にあった戦争のせいで原料が足りず、ごくわずかしか発行されなかったせいだ。おかげで希少価値が高く、偽物も多く出回っていた。やっと見つけたコインには偽物の特徴がなかったのに――。
「あの古物商、今度会ったら解体してやる……」
本物だというのでかなりの大金をつぎ込んでしまった。
偽物だと気づいたのはだ。さわって「この一枚だけ花びらの数が違うんだね」と言い出したのだ。シリーズに必ずデザインされる花は発行国の象徴で、花弁の数が違うなんてありえなかった。
セイロウ島で鑑定に出したところ贋物と確定し、「最近出回り始めた新しい偽造コインだね」と同情された。ショックすぎて怒る気力もない。
「キャプテン元気だして。探してればいつか見つかるよ」
船長の落ち込みようがあまりにひどくて、はケンカしていたことも忘れて彼をなぐさめた。
「ええと、ほら、ワンピースの中にあるかもしれないし」
「そうだな……」
沈んだ声が変わらないので、は一生懸命なぐさめようと頑張った。
「ええと、ええと……お団子食べる? 甘くておいしいよ。ちょっと焦げたお醤油の匂いがして、それがすごくいいの」
偽造コインを掴まされたショックを癒すために、みたらし団子の味を力説するを見て思わずローは笑ってしまった。
「そんなに気に入ったか」
「うん」
「なら俺の分もやるからが食べろ」
「ダメ! そんなこと言って、明日なにも食べられなかったらどうするの」
奴隷の頃の習性からか、は食べ物に対する考え方がシビアだ。何年も気まぐれにしか食事を与えられない環境にいたせいで発育も不良で、体重も平均に全然足りない。ハートの海賊団に入って「甘いモノなんて何年かぶりで食べた」なんて言い出したので、ペンギンが毎回の食事にだけはデザートをつけたくらいだ。
「明日も大丈夫だから心配するな」