第4章 白竜の彫師
「キャプテン痛い? 痛い?」
ローの右手を両手でぎゅっと握りしめて、は自分が彫られているわけでもないのにもう泣きそうだった。
座って反対の手の甲をサギィに彫られながら、ローは返答を考えた。
「……まあ、少し」
自分的には全然痛い部類に入らなくても、のちのちに「痛くないって言ったのに!」と責められることを考えて無難な返答にする。
「どんな痛み?」
「どんなって言われてもな……」
針と言うとがまた動揺しそうだったので、似たようなものを考える。
「ウニに刺されてるみたいな――」
「ぶ……っ」
吹き出すのを必死にこらえるサギィに、ローは自分のたとえがあまり適切ではなかったのを悟った。
「キャプテン、ウニで刺されたことがあるの? ……女の人?」
「ねぇよ。ただのイメージだ」
ばつの悪い思いでローは乱暴に言う。
(の中で俺は女にウニで刺されるイメージなのか……?)
どういうシチュエーションなんだそれ。
「ウニ……」
は必死に痛みを想像しようとしている。
「ウニは忘れろ」
「ウニを思い出すと辛いの?」
「違うから哀れみの目で見るな!」
「見てないよ、見えないもん」
とうとうサギィは声を上げて笑いだした。呼吸困難になるほど笑い倒し、
「お兄さん海賊ってウソでしょ」
「ウソじゃねぇ」
「懸賞金は?」
「……八千万」
サギィはさらに爆笑した。苦々しい思いでそれを見つめ、
「……おい、のせいだぞ」
ローはに罪をなすりつけた。