第4章 白竜の彫師
確かに刺青を入れている海賊は多いが。
「練習台が欲しいって?」
「それもあるけど。海賊に彫るの好きなんだよねー。生き方が粋だから、刺青も粋になるんだ。細かいこと言わないしさ。カッコよく彫ってくれればいいってノリが、すごい好き」
キラキラと語るサギィは、本当に彫師の仕事が好きなようだった。
「い、痛いの!?」
の悲鳴に、ローは振り返った。はもう服を着て、何やらマリーアと話しているが――。
「そりゃ針で彫るわけだし多少はね」
「針……!?」
泣き出しそうな声に、ローは席を立つとのところへ戻った。
「どうした」
「キャ、キャプテン……刺青彫るのって痛いんだって。しかも針なんだって……」
「針がどうした」
身を縮こませて、は首を振った。
「罰として爪の間に針を刺されたことがあるの。あれはもう二度と嫌。針だけは嫌……」
「今回は爪の間に刺す訳じゃないだろ」
ローはなだめようとしたが、はブンブン首を振って「針は嫌」と繰り返した。
思わぬ事態にローはマリーアと顔を見合わせる。こんなに嫌がってるのに無理強いはできないよ、と首を振られてしまった。
「、今回の件でわかっただろ。奴隷の焼印はあらゆるトラブルの元だ。早急に消したほうがいい」
「誰にも見せないようにするから」
「不慮の事故は避けられない。今回だってそうだろ」
怯えた顔をされてしまった。
「……わかった。じゃあ、俺が先に入れる」
「え!?」
びっくりしては顔を上げた。
「隣で見……るのは無理でも、なんとなく作業の感じはわかるだろ。それでも無理そうだったら他の方法を考えるから」