第4章 白竜の彫師
「ふぁ……」
歩きながら大あくびをしたを見て、ローは「まだ眠いんだろ」と声をかけた。
「ん、平気……」
歩きながら寝そうな様子で目をこすり、は船長の左腕に掴まって歩く。二人は今、マダム・シュミットの紹介で、町外れに住むある人物を訪ねようとしていた。
「目、開いてねぇぞ」
「閉じてても一緒だもん」
「……そりゃそうか」
納得したローの前で、杖で地面を叩き、は「今はこれが私の目」と胸を張った。
「ふーん?」
杖は服屋に置きっぱなしになっていたのを、忘れ物だと店主がローの医学書と一緒に届けてくれた。誤解を詫び、が買うはずだった服もずいぶんと値引きをしてもらった。そのためは今、パーカーにキュロットスカートという年相応の格好をしている。
「しかしなんで耳付き……」
パーカーについたクマの耳らしき突起をつついて、ローは首を傾げた。対するは上得意だ。
「いいでしょ、ベポとおそろい。でも重大な欠点が一つあって――」
ひどく深刻そうに、はパーカーを撫でた。
「ベポとおそろいにしては、もこもこが足りないの」
「春島で、もこもこは暑すぎるだろ」
当のベポはまだセイロウ島・食い倒れツアーに参加中で、連日メタボを心配する食べっぷりらしい。
10キロ増えてたらローは標準体重に戻るまで走らせる気満々だった。こうなったら鬼船長を極めてやる。
「えー、もこもこ大事だよ」
「そこまで追求したらうちは『ハートの海賊団』じゃなくて『クマクマ海賊団』か『ベポベポ海賊団』になっちまうだろ」
は顔を輝かせた。
「すごくいいと思う。改名はいつ?」
「俺が船長の限りは絶対しない」
えー!とは不満顔だ。