第10章 一以貫之【イツイカンシ】
と若君を安土に連れ帰った後は上へ下への大騒ぎとなった。
天下人と成る筈であった絶対君主を失ったのだから当然であるのだが……
いや、『失った』という物言いは正確では無い。
結局信長様の生死は判明していないのだ。
尋常で無い程の人員を割き探しに探したが御遺体は見付からず、だからと言って生きて戻っても来ない。
一体誰が何の為に本能寺を襲ったのかすら判明しない、何とも不気味で後味の悪い結末を受け入れるしかなかった。
どうすれば良いのかと容赦無く襲い来る不安に戦きながらも、そんな中で唯一の救いであったのは秀吉の存在だ。
恭敬する信長様が居ない今、一体どうなって仕舞うのだろうかと俺は心配を重ねたが、秀吉は政宗や家康、勿論己の家臣である三成を完璧に統率し、信長様が築き上げていた時勢を守り抜いた。
はと言えば、過去の様に乱心する事も無く、信長様の分もと許りに若君を慈しみ育てていた。
そして俺は、この先に起こるかもしれない混乱を抑え込むにはどうする可きかを考えに考え抜いて……一つの決心を固める。