第8章 常住不滅【ジョウジュウフメツ】
その日の晩は当然の如く宴になった。
信長様達ての希望で何時もの広間では無く中庭で催される事と成り、皆で政宗自慢の料理を食し酒を酌み交わす。
宴も闌を過ぎた頃には各々が好き勝手移動しては思い思いの場所で愉しんでいた。
俺は脇息に肘を預け、そんな皆を見渡し笑みを浮かべる信長様の隣に腰を下ろす。
「信長様……一献。」
「……うむ。」
差し出された盃に酒を注げば、信長様は一気に喉へ流し込んだ。
それ以降は言葉を交わす事無く、無言でお互いに酌を交わす。
決して気不味い訳では無い。
唯、今の俺と信長様の間には『言葉』という曖昧な物など不要であったのだ。
ふと信長様に視線を向けると、穏やかに目を細めて一点を見つめていた。
その視線の先へと俺も目を向けて見れば、其処には当然の様にが居る。
池の辺で政宗と燥ぎ合い、それを「危ない」と秀吉に窘められていた。
そんな三人の傍には当たり前の様にこれ又家康と三成も鎮座している。
安土の日常が戻って来た事を痛切に感じ、俺も表情を綻ばせたその時……
「……光秀。」
信長様が俺の名を呼んだ。
「何でしょう?」
「大義であった。」
「……は?」
俺は驚きを隠す事も出来ず、信長様を見遣る。
一体、何について語っているのか?
城を護った事か?
いや、城攻めを受けた訳でも無いのだ。
『大義』などど言われる程でも………
「が今、ああして笑っておるのは貴様のお陰なのであろう?
貴様がを生かしてくれたのだろう?」
心臓を射貫かれた気がした。
信長様は何を知っている?
何に気付いている?
の様子から何かを感じ取ったのか?
己の保身を考えている訳では無い。
自分の処遇など如何なろうとも構わない。
只、もし信長様が腹に据えかねているのであれば、それがへと影響を及ぼす事が怖いのだ。