第8章 常住不滅【ジョウジュウフメツ】
「もう泣かずとも良い。
俺はこうして戻って来たのだから……」
それでもは信長様から離れる事は無く、嗚咽を漏らし続ける。
「泣き止めと言っているのが分からぬか、?
……ん?」
信長様の大きな手がの両頬をすっぽりと包み込んで上向かせ、親指で絶え間無く溢れる涙を拭った後……
「………っ!」
唐突に二人の唇が重なった。
この場に居る全員が息を飲み呆気に取られてその姿を見つめても、信長様は何処吹く風で何度も顔の角度を変えてはの唇を貪る。
にやにやと愉快さも顕に笑う政宗。
呆然としたままの家康は耳まで紅潮させ、三成はうっとりとした視線を向けている。
そして俺はと言えば……
この感情を何と表現すれば良いのだろうか?
そう……敢えて例えるのであれば、僅かな風にゆったりと波打つ湖面の様な揺らぎを感じていた。
「…ぁ、ううんっ!」
そして態とらしく響いた秀吉の咳払いで皆が我に帰る。
「信長様……
あの…そういった…行為は……
後に、天主で…と二人になってから…致して頂けると……」
言葉を選び選び、やんわりと信長様を窘める秀吉だったが
「喧しいぞ、秀吉。
俺は今、に触れたいのだ。
邪魔をするでない!」
逆に信長様に一喝されて仕舞った。
「これ……どうすれば良いんですかね?」
「いや、こうなっちまったらもうどうしようもねえだろ。」
家康と政宗が溜息を吐いて言った通り、俺達はその後も暫く口付けを交わす信長様との姿を見せられ続ける事になる。