第8章 常住不滅【ジョウジュウフメツ】
あの男の言った通り、翌日には織田軍と共に信長様が帰還した。
一向を城門で迎えた俺は、馬上の信長様が無傷である事に自然と安堵の息を漏らす。
「善くぞご無事で…。」
「面倒を掛けたな、光秀。」
当たり障りの無い遣り取りの中にも、そこには確かにお互いへの敬意が含まれていた。
秀吉にも俺一人に城を任せた事を労われ、政宗は刀を揮え無かった事を未だ無念がっている。
にこにこと笑う三成の横では相も変わらず家康が仏頂面で毒吐いていた。
だが全員が信長様の帰還を心から喜んでいるのは明白だ。
「あ゛あ゛ーーーーー!!」
そんな中、突然に響き渡った声の方向へ全員が目を向けて見れば、城門の向こうからが此方へ駆けて来る。
「!!」
馬上から飛び降りた信長様が両腕を拡げると、はその大きな身体を押し倒さんばかりの勢いで信長様の胸に飛び込んだ。
「うあ゛…あ゛……
の…ぅな……まぁ……」
「……憂慮させたであろう。
すなまかった。」
「う゛…んう゛…」
は涙でぐしゃぐしゃになった顔を大きく左右に振ってから、信長様の胸に顔を埋めてその華奢な腕をぐっと背中に回す。
「こら……。
それ程に獅噛み付くでない。
苦しいではないか。」
そう言って苦笑を漏らす信長様の表情にはへの慈愛、そして抑え切れない幸福感が満ち満ちていた。