第6章 望蜀之嘆【ボウショクーノータン】
「……ぃ…で。」
「何……?」
信長様の夜着を手放したの指先が、俺の目尻をそっと撫でた。
「な…かな……ぃで。」
……………『泣かないで』?
泣いている?
この俺が?
物心が付いて以来、涙を流した記憶など一切無い俺が泣いているだと?
何を巫山戯た事を………
「…かな……で。
みつ…ぃで…さ……」
ああ……たった一度で良いからと望んだ事だ。
一度だけで良いから俺の名を呼んでくれと望んだ。
もう俺は己が泣いているのを認めざるを得ない。
何故ならの顔は俺から滴る雫を全て受け止め、しっかりと濡れてしまっているからだ。
それでもそれを嫌がりもせず、は穏やかに微笑みながら幼子をあやす母親の様に両手で俺の頬を拭ってくれる。
その秘部には俺の一物を打ち込まれているのに……。
「っ……っっ…」
俺は堪らずに覆い被さると、ぱんぱんと音を発てて肌を打ち合わせ激しい抽挿を繰り返した。
「……達け!
お前も達ってくれ!」
「あ゛…んんっ…」
己の手管でを絶頂へ導きたい……それは無謀な願いだったのだろうか。
結局は二度三度苦し気な声を漏らしただけで、またしても俺の方があっさりと音を上げる。
「くっ……う…うう…」
傷跡塗れの乳房に顔を埋め全身を震わせながら、どぷどぷとその中に吐き出している最中もの手は慰める様に優しく俺の髪を撫でていた。