第1章 妄想之縄【モウゾウーノーナワ】
その晩、俺は御殿の自室で書簡に目を通していた。
既に子の刻を回り、御殿の中はしんと静まり返っている。
こうして只管に政務に打ち込めば、己の中に燻る邪な熱を自覚しないで居られると思っていた。
そんな物は只の誤魔化しである事も充分に理解している癖に。
それが証拠にどれだけ書簡に集中しようとしても、今日この胸に抱えたの感触が拭い去れない。
既に日も変わり半日以上経過しているにも関わらず……だ。
小さく柔らかい身体、艶やかな黒髪、肌からは微かに甘い香りが漂い……
そして抜いた襟から覘いていた項には紅い花を咲かせていた。
この胸に抱え上から見下ろさなければ気付かなかっただろう。
だが俺はそれを目にして仕舞った。
あの所有痕は………
今夜も上書きされているのだろうか?
それこそたった今の今、は信長様の腕の中で身悶えて居るのかもしれない。
「……ふっ…」
己の身体の正直さに苦笑を漏らす。
元服間際の小僧でもあるまいに、俺の一物は熱く固くなっていた。
こうなって仕舞えば己の手で治めてやるしかないだろう。
俺は袴の隙間から一物を取り出し、右手でゆっくりと扱き始めた。