第6章 望蜀之嘆【ボウショクーノータン】
「『貴様は誰の物だ、。』」
信長様が何度もに問うた言葉。
意識した訳ではないが、まるで信長様を真似る様に普段より一段低い声で俺はその言葉を紡ぎ出していた。
すると途端に俺を憎々し気に睨み付けていたの表情が複雑に揺れ始める。
「そうだ、お前は信長様の物だ。
その主君の寵姫に手を掛けようとしているのだ……俺は。」
それでも未だ俺から視線を反らさないでいてくれるの頬をやんわりと撫で包む。
「俺を恨め、。
恨んで、憤って………
その譴責の熱を糧にして生き抜くのだ。」
そのままの首筋に顔を埋め、両手で乳房を揉み拉く。
は全身を強張らせたものの、特に拒む事はしなかった。
首から鎖骨、乳房、そして固く主張し始めたその先端まで唇を這わせながら、強く吸い上げて所有痕を残したい衝動に駆られる。
だがそれを信長様に見咎められればまたが仕置きを受ける事になると思い、俺は何とかその衝動を抑え込んだ。
信長様から与えられる仕置きは途轍もなく甘く念入りで、に取っては極上の悦びなのかもしれぬ。
……それはそれで面白くない。
大体その衝動を抑えられるのならば、今直ぐを解放してやれば良いではないか。
それ以前に今は信長様の無事すら確認出来ていないのだ。
俺の中でぐるぐると渦巻く混沌とした感情。
そしてその感情に全く制御される事無く、を求め続ける己の身体。
得体の知れない物に操られる如く動き続ける俺の四肢はの全身を這い回り、そして遂には己の着ていた物を全て脱ぎ捨てていた。