第6章 望蜀之嘆【ボウショクーノータン】
小袖の襟に両手を掛け引き千切らんばかりに思い切り左右に開いてやれば、想像以上に豊満な乳房と更に想像以上の疵痕が現れた。
どうしても俺の視線は撓わに震える乳房では無く、其所に散らされている疵痕に注がれて仕舞う。
「酷い事を………」
やはり彼奴らは撫斬にされて当然であったのだ。
その疵痕を数える様に俺の指先がゆっくりと乳房を擦れば、は四肢をばたつかせて暴れ出した。
「大人しくしていろ、。
お前に怪我はさせたくない。」
そんな抵抗など簡単に遇って、俺の両手はの帯へと移動する。
「全部……見せろ。」
乱暴に帯を解き、小袖と襦袢を剥ぎ取り、全裸に剥いたを見下ろして
「ぐぅっ…」
俺は小さく嘔吐いた。
胸にも腹にも、背中にも、臀部にも、まるで丁寧な仕事を施した様にきっちりと疵痕が刻まれていたのだ。
この全ての疵が未だ生々しい状態を見た家康が「手が震えて嘔吐しそうだった」と言い放った事が痛い程に理解出来る。
あれ程見たいと望んだ物を目の当たりにして、俺は己の愚かさを痛烈に恥じた。
「すまない……。
………すまない。」
既には暴れる事を止め、牙を剥いた野良犬の様に呼吸を荒げ俺を睨んでいる。
信長様はこの身体を何の蟠りも無く受け入れ、愛したのだ。
恐らく今の俺の様にみっともなく狼狽える事もせず。
為らば……俺だとて……出来ぬ道理は無い。