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(HQ) 亡青春に捧げるエチュード

第1章  秋の昼下がりに瞬いた星(木葉秋紀・木兎光太郎)



 そのときだ。
 校内に予鈴が鳴り響いた。

「もう授業かよー! かったりー!」

 木兎が、伸びがてらに空を仰ぐ。

 多目的室の窓辺。
 木葉と朱花がぴたりと硬直してからコンマ二秒。彼らの姿を捕らえてすぐ、ふたつの黄金がパッ!と煌めいた。


「おーー!木葉じゃーん! あと青嶋もー! イエーーイ!」


 満面の笑みで叫んでみせて両腕をブンブンしている木兎に、木葉と朱花は釣られて、笑んで。

 ひらり振り返した掌。
 小さく小さくついた溜息が、秋空のなかにそっと溶けていく。


「……あーあ、あれだからうちのエース様はさ、結局は憎めないんだよなァ」

「なにがイエーイなんだろね」

「さあ? 木兎にしか理解できないイエーイポイントがあったんじゃね」

「ふふ、何それ」


 さわさわと風。
 開かれた窓から吹きこむのは、甘やかな。──秋だ。どこか物寂しく人肌恋しい秋がここにある。物憂げな梟たち。


「ところで今日ゲームしに来」
「行かない。絶対行かない」

「わかった20時に迎えいくわ」
「んん、会話する気ゼロ! ひとの気も知らないで!」


 もどかしい春も、咲いている。



 了
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