第2章 痛がりな僕らと声なき恋(天童覚)
「……!? ……!!?」
声にならないくらい驚いて、彼の腕に閉じこめられたまま軽いパニックをおこした。
だって高校生なのだ。
彼は、覚は、高校生。
いや、私より若いんだろうなとは思っていたけれども。彼のほうがお肌つるつるピチピチだし、口振りからしても学生なんだろうなとは思っていたけれども。
でも、まさか、まだ高校生だったなんて……!
さ、と血の気がひいた。
私の部屋に覚が出入りしていることは周知の事実。これまでの彼は私服だったからよかったものの、こんなに可愛らしいジャージ姿、じゃなくてティーン丸出しの格好はまずい。とてもまずい。
しかもいま、私はそんな彼に抱きしめられている。ギリギリアウトで犯罪である。いや普通にアウトで逮捕だ。
「ちょ、っと、覚……!」
ともかく現状を脱しなければ。
どうにかして彼の腕中から抜けだそうと、硬い胸板を押しかえした。しかしそこでようやく気づく。彼の身体が、わずかだが震えているということに。
ああ、どうして。
私は保身のことしか頭になかった自分を呪った。ひとしきり呪って自責の念に駆られたあと、そっと、呼びかける。
「……さとり」
ゆっくり、柔らかく。
語尾に疑問符をつけて彼の名を呼んで、それから、純白の背中を抱きしめかえした。冷たい。傘も差さずにやってきたのだろうか。
「帰ろう? ね?」
小さく諭すと、首を左右に振っていやいやをする彼。「ううん、そうじゃなくて」私は抱きしめかえす腕に力を加えて、こう言葉を足す。
「私の部屋に」
こくり、彼が頷いた。